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第8章 自転車に乗って

>ゴゾの地図(別ウィンドウで開きます)
 朝起きると外は雨だった。

 とりあえず朝食を食べようと、7時半過ぎにロビーへと下りていった。
 コミノ島行きのボートツアーに参加したいと思い、フロントにいたおじさんにツアーのパンフレットが無いかどうか尋ねた。
「グループ?それとも個人で?」
 ・・・グループって何?

 フロントのおじさんがすっとレストランの方を指さすと、そこにはお皿を持ってうろうろする、日本人のおばさん達の団体が!
・・・まさかゴゾのホテルで、日本人の団体ご一行様にお会いするとは思わなかった。

 「私はグループじゃないです。個人です。」と言うと、コミノ&ブルーラグーンの半日ボートツアーのパンフレットを出してくれた。
「今日参加されますか?」
「今日は天気が悪いので、どうするかしばらく考えます。」

 さてレストランに入り部屋番号を言うと、昨日と同じ席へ案内された。飲み物に紅茶を頼んでから、ビュッフェカウンターへ食べ物を取りに行った。
 ちょうど日本人のおばさん数人も取りに来ていたので「おはようございます〜」と言うと、向こうも他の日本人が他にいることにびっくりしていた。
 団体さん方は15人ほど、イタリアを廻ってから、マルタへやってきたらしい。
おばさんの一人が「そういえば貴女、昨日フェリーに乗ってなかった?」と言った。
昨日フェリーから見た船に乗っていたのは、どうもこの団体さん方だったようだ。
 
 パン、リコタチーズ、ハムをお皿に載せて席に戻ってくると、テーブルの上にはポットが置かれていた。カップに注ぐと、コーヒーだった。
・・・昨日のワインの赤と白といい、今日の紅茶とコーヒーといい、どうして注文と逆のものが出てくるのだろう。私の発音、そんなに悪いのか〜(泣)
 マルタには観光でなく、語学留学で来た方がよかったかもしれない(^^;)


 食事を終えて部屋へ帰る。雨はパラパラ程度に変わっていたが、気温は上がらず、Tシャツの上に一枚羽織ってないと寒いぐらいだった。
 せっかくコミノ島まで行っても、ブルーラグーンで泳げないのも悲しいので、コミノ島に行くのは明日にすることにして、今日はアズレウィンドーと時間があればシタデルの博物館、そして昼から天気が回復すればラムラ湾に行くことにした。
 フロントでアズレウィンドーまでの行き方を尋ねると、まずバスでヴィクトリアまで行き、そこでバスを乗り換えろとの事。そこでバスでヴィクトリアへと向かった。

 ヴィクトリアのバスステーションの窓口で、アズレウィンドー行きのバスの時刻を尋ねた。
 アズレウィンドーへはサン・ローレンツ行きのバスで終点まで行き、そこから少し歩くらしい。次のサン・ローレンツ行きのバスの発車時間は、10時30分と11時30分。
「アズレウィンドーには長くいるつもりか?」とバスのおじさん。
「? 1時間ぐらいのつもりだけど・・・」
「16時過ぎまで、帰りのバスは無いよ」
・・・え!?
「10時半のバスで行ったら、ヴィクトリアを11時半に出発してくるバスで帰れませんか?」
「無理だね。サンローレンツからアズレウィンドーまで、歩いて20分ほどかかるよ。」
「・・・・・」

 泳ぐならともかく、まる1日をアズレウィンドーで過ごす気は無かった。
 アズレウィンドーは諦めて、昨日閉まっていたシタデルの博物館でも行こうと歩き出したとき、バス通り沿いにレンタサイクルの店があるのを見つけてしまった。
 ふらふらっと中へ入る。

「アズレウィンドーまで行くのに自転車借りたいのですが・・・」
「アズレウィンドーだけでなく、ゴゾ中廻って1日Lm2(500円)だよ。19時までに返してくれればいいからね。」
「いや、アズレウィンドー行くだけだから半日でいいんだけど・・・。アズレウィンドーまで自転車で何分ぐらいかかりますか?」
「20分ぐらいだね。」
それならバス&歩きより早いじゃない!商談成立。

 デポジットに本当ならパスポートを預けなきゃならないそうだが、ホテルのセキュリティーボックスの中に放り込んできていたので、代わりにクレジットカード(写真付き)を預ける。
 借りた自転車は、一番小さなマウンテンバイク。盗難防止に鍵付きのワイヤーも貸してもらった。
「アズレウィンドーは、その先をシタデルの方に左に曲がって、その後はSan LawrenzとCrafts Villegeの表示に従って行けばいいよ。」自転車屋のおじさんが、道を教えてくれた。


写真:自転車 さて出発。マウンテンバイクにはほとんど乗ったことがないので、ちょっとよろよろ。
 後ろでおじさんが「返すのは19時でいいからね。のんびり廻ってこいよ〜」と叫んでいた。昼には返すって・・・。

 私がよろよろと自転車を漕いでいる横を、車がびゅんびゅんとばして走っていく。怖い怖い。バス通りを左に曲がり、シタデルへと上がる坂道に入る三ツ角を過ぎたあたりに、「San Lawrenz,Gharb,Craft Village」などと書か
れた行き先表示板があった。表示に従って右へ曲がる。
 すぐに道幅が広い下り坂に出た。街の中心から少し離れたせいか、車の往来も少なくなった。ちょっとマウンテンバイクにも慣れてきたこともあって、びゅーんと飛ばして坂を下り、そのまま街から出て緑の農耕地帯へと入っていく。風に乗って花の香りと、肥やしの臭いが漂ってきた。


写真:水道橋 しばらく行くと、騎士団時代に建てられたゲートが道の上にそびえていた。そのゲートの下をくぐり抜け、道は続いていく。左手には崩れかけた、これも騎士団時代に作られた水道橋が見えた。

 道はやがて緩やかな上り坂となり、何処かの町中に入り、そして三叉路に着いた。ヴィクトリアの街からここまで10分ほど。
 さてこの三又路、何の行き先表示も出ていない。サン・ローレンツの街はどっちだ?
 通行人に聞こうとしばらく待ってみたが、車は数台通ったものの誰も歩いてこない。やがて観光客を乗せたバスが左へと曲がって行ったので、左の道を進むことにした。

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