マルタ探索記４

第４章　ゴゾフェリー

　港にはフェリーが１艘停泊していた。
　「ラッキーだね。ちょうどフェリーが出る前だよ」
　タクシーの運転手のおじさんは私のスーツケースを車から降ろすと、親切にも乗船口のすぐ側まで運んでくれた。そして「帰りに必要なら呼んでくれ」と名刺を渡して、走り去っていった。

　さて船の切符を買おうと辺りを見渡したが、切符売り場が見あたらない。
　黄色いシャツを着た（どうもこれが制服のようだ）フェリーの係員がやってきて、時刻表と通しナンバーが書かれた紙を私にくれた。
　「お金は帰る時だよ。」
　そういえば、往路は整理券をもらうだけで、支払いは復路でまとめて支払う、そんな事がガイドブックに書いてあったような気がする。
　「荷物は預かるよ。無料だからね。」
と言うことなので、荷物をその係員に預けてフェリーに乗り込んだ。

　下の甲板は車専用なので、船室のある上甲板への階段を上る。かなり急な階段で、確かにこれではスーツケースなんて、とても持って上がれるものではなく、下で預かるのも無理はなかった。
　上甲板には船の前後共に大きな船室があり、それぞれにバーがあって飲み物やお菓子を売っていた。私は景色が見たいので船室には入らず外へ。外には船室に沿ってベンチが並んでいた。
　どうせならコミノ島の見える右側に座ろうと思ったが、船のどちら側が先頭なのかわからない。船の見取り図が貼ってあったのでそれを見ると前後対称、前にも後ろにも操舵室とスクリューがついている。どっちにも進めるようだ。とりあえず今ゴゾの方を向いている方を先頭として右手のベンチに座わった。

　すぐにフェリーは出航した。港を出るとやはり方向転換することもなく、そのまま真っ直ぐゴゾへ向けて進んでいく。
　海は透明度が高く、下の岩に貼り付いている藻までよく見えた。海の色は地中海の青。ギリシャのミコノス島より深い青であり、サントリーニ島のそれより淡い青。風があるので、結構波が立っている。

　やがて右手にコミノ島が見えてきた。島の周りはナイフでざっくり切り取ったような断崖が続いている。その断崖の上には、正方形をした騎士団時代の砦・コミノタワーも見える。船はコミノ島の南から西側までの横を通り過ぎ、最後にちらっとだけコミノット島との間にブルーラグーンを覗くと、やがてゴゾ島側の港イムジャーに向けコミノ島から離れて行った。
　
　フェリーの前方右手に、カラフルな色合いのボートが１艘走っていた。漁船よりひとまわり大きな船で、後方にカメラ構えた人達が十数名ほど乗っていた。コミノ島への日帰りクルーズの船だろうか？
　フェリーがその船を追い越した時、乗っている人達が見えた。
　・・・なんだか乗っている人達、日本人のおっちゃん・おばちゃんに見えるのだが・・・。

　高台に大きな教会がある港にフェリーは接岸した。乗客はすぐに下へと下り始める。

　船を下りる前に甲板から港の写真を撮ろうとして、「グレンイーグルスめっけ！」

　Ａ・Ｊ・クィネルの小説、クリーシィ・シリーズに出てくる酒場『グレンイーグルス』は、港から丘の上の町へと向かう坂の途中に建っていた。白い２階建ての建物で、大きくＧＬＥＮＥＡＧＬＥＳ　ＢＡＲとしっかり書かれている。

　そして私がこのゴゾで泊まるリムジャール・ホテルも見つけた。それは丘の上の一番高い所に建っていた。
・・・さて、どうやってあそこまで行こう(^^;)

　船を下り、預けたスーツケースが出てくるのを待つ・・・なかなか出てこない。マルタへ向かう人達が乗り込む段階になってもまだ出てこなかった。
　近くのフェリーの係員を捕まえ、「荷物がまだなんですけど・・・」と言うと、「もうちょっと待っててくれ」との事。船の一番奥に荷物を入れたカーゴを置いてるようで、フェリーに積み込まれている車が全部出てしまわないと、取り出しに行くことができないらしい。

　待つこと十数分、やっと出てきたスーツケースを受け取る。
　さて、ホテルまでどうやって行こう？スーツケースを引っ張っりながら歩いていくには、あの丘の高さは酷だし、ホテルに迎えの車をよこしてもらうよう電話しようにも、小銭を１銭も持っていない。
　しかたがないので、すぐ側にいたタクシーに声を掛ける。
「なんぼ？」
「３リラ（７５０円）」
ぼったくりや～っ！

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第４章 ゴゾフェリー

第４章　ゴゾフェリー